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第6回 静岡県 JR身延線 富士高砂酒造
地図 静岡県 JR身延線 富士高砂酒造 富士山の世界遺産登録を記念して、富士山のふもと、静岡県富士宮市にある富士高砂酒造を訪ねました。

JR身延線は、富士駅から富士山の西側をぐるりと回り山梨県甲府駅まで続く路線。車窓には右に左に富士山が現れると聞きましたが、訪ねた日はあいにくの曇り空。「あの辺に富士山が見えるはず」と「エアー富士山」を眺めてきました(しょんぼり)。

駅で手に入れた「身延線沿線マップ」を見ていると、白糸の滝や富士山本宮浅間大社などの観光地の他、「土産」として「地酒」が紹介されているではないですか!これから訪ねる富士高砂酒造のお酒も紹介されていて、期待が高まります!
身延線の313系電車。ワンマンカーです。 西富士宮駅は数少ない?有人駅。
富士高砂酒造は、西富士宮駅から徒歩10分ほどでした。案内して下さったのは副社長さん。
「もともとは近江商人だった山中正吉が天保元年(1830年)に、この地に酒蔵を構え、酒造りを始めました。ですから、かれこれ180年以上の歴史がありますね」。
当時、山中という名字を取って「山屋」と「中屋」という屋号を使っていたそうです。お店の中に掲げられた「中屋」の看板は、かの有名な中村不折の書と言いますから、風格が漂います。

中村不折=明治~大正~昭和に活躍した書家。夏目漱石の「我が輩は猫である」の挿絵や題字も書いている。

角の郵便ポストがタイムスリップさせる店構え。 「中屋」は、中村不折の書。
富士山には川が流れていないことをご存知ですか? つまり、降った雨はすぐに地面にしみ込み、100年もの時間をかけて地下を流れ、伏流水として湧き出てくるのです。富士高砂酒造では、その伏流水を使ってお酒を仕込んでいました。

治維新の神仏分離時にかくまった富士山下山仏の薬師如来様が、蔵を見守ります。 富士山の伏流水は枯れることがありません。 副社長さんは、「27mの地下からくみ上げています。富士山の地下を流れているうちに濾過されて、とても柔らかい水になっているのですよ。超軟水ですから、ミネラル分が少なく発酵力が弱いため、このお水で仕込むには腕と技が必要です」と言います。
能登杜氏の伝統を受け継ぐ技法により口当たりの良い、なめらかな味わいのあるお酒となるそうです。「静岡の酒米『強力(ごうりき)米』と静岡酵母、富士山の水で、口当たりの優しいお酒を造っています」とのこと。

「うちの蔵の特長は、『山廃仕込み』ですね」と副社長さん。「山廃」とは、蔵に住み着いた自然の乳酸菌を使って酒母を造ること。技術が必要で時間のかかる作業ですが、「すべて手づくりということにこだわっています」と言います。

「このあたりは冬に雪が降りませんが、『富士おろし』という冷たい風が吹き、酒造りに適していると言われています。あそこにど〜んと富士山が見えるはずなのですが」と、副社長さんが、東の空の雲の固まりを指します。「ちょうど今、『ひやおろし』を出荷したところです。夏の間冷んやりとした蔵で熟成し、二度目の火入れをせずに生詰めとして出荷するもので、今しか楽しめないお酒です」。
蔵には昔の器具が展示されていました。 お祭りのときは、各町のラベルを貼ったお酒を造ります。
「ひやおろし」だけでなく、山廃の酵母を使ったヨーグルトや緑茶のリキュールなども試飲させていただきました。
「『山廃』というと敷居が高くなる印象がありますが、気軽に楽しんでいただければと思います。静岡酵母はおだやかで、食事と一緒に楽しんでいただける優しいお酒になります。ぜひ、食中酒として味わっていただきたいですね」と、副社長さん。
試飲させていただいたお酒。代表銘柄は「高砂」。「ひやおろし」はまろやかな味わい。 富士宮に来たからには食べなきゃ!帰り道に「富士宮焼きそば」を堪能。
「冬に来ていただければ、雪をかぶった富士山がくっきり見えますよ」と副社長さんがおっしゃるように、お訪ねするには寒い季節がいいのかもしれません。11月からは本格的に酒造りが始まるとか。世界遺産訪問の折に寄られてはいかがでしょうか?

富士高砂酒造

天保元年(1830年)創業。平成7年、「山中正吉商店」改め「富士高砂酒造株式会社」に。代表銘柄は「高砂」。「高砂」は創業当時の天保年間、飢饉が続いた頃に、初代正吉が謡曲「高砂」に感動し、「天下太平」を祈して命名したと言われている。お酒の購入、蔵見学の申し込みはホームページから。

富士高砂酒造ホームページ

身延線

静岡県富士市の富士駅と山梨県甲府市の甲府駅とを結ぶ88.4kmのJR線。
富士山と南アルプスの間を流れる富士川沿いを走る、富士山の眺めが最高の路線。2027年開業予定の中央新幹線と交わる地点に接続駅を設ける計画がある。

沿線の観光情報「ふじかわ紀行」

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