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Interview

やる気スイッチは音楽!?-音楽と脳の研究

2024.3.18

日々のお仕事や勉強で「今日はなんだか調子が出ないなぁ」「私のやる気スイッチはどこだろう?」と思うこと、ありますよね?そんなとき、みなさんはどのように対処していますか?

本日は、音楽を使った「やる気スイッチの入れ方」とも言える方法も研究されている宮崎先生にお話を伺いました。

Info

宮﨑 敦子(みやざきあつこ)


7年の研究成果

宮﨑敦子さんは現在、東京大学先端科学技術研究センターの特任研究員だ。つい先日「すごい音楽脳(すばる舎)」を出版されたばかり。

宮﨑さんは「Dr.DJ.ATSUKO」という名でDJ活動もしている大の音楽好き。DJが「音楽を使って人の動きコントロールしていることの不思議」を解明したいと、音楽と脳の関係を研究はじめたという。

書籍の内容をごく簡単に言うと「作業前にテンポの速い曲を聞くと作業スピードが上がる」ということ。歌を歌おうとか、楽器の練習をしようといった難しいことは一切なく、誰でも簡単に取り組める内容だ。

書かれていることは「すべて私が実験した結果が元になっています」と宮﨑さん。過去7年ほどの研究成果が詰まっているという。

脳の準備ができる

ヒトにはもともとそれぞれのテンポがあるのだそう。個人差があり、住んでいる場所によってもスピードが変わるが、「そのヒトが生まれ持ったもので一生変わらないんです」。

作業前にこの「自分のテンポ」よりも早いテンポの曲を聞くと、作業効率が上がるのだという。にわかには信じがたいが、宮﨑さんの実験で実証されている。

パーキンソン病という病気がある。症状として運動障害があり、歩き出しが困難になる方もいるそう。足を出すタイミングがわからないのだ。「この方々にあらかじめ歩く速さのリズムを感じてもらうと、すんなり歩き出せるんです」。

リズムを感じると脳の中の「準備をするエリア」とも言える部分に信号が送られ、脳からの司令が送られやすくなるのだそう。「作業前に聞く音楽も同じ働きをしている」のだとか。

気分を変えるだけで十分

「でも、アップテンポの曲を聞くことで不利益もあるんです」と宮﨑さん。短期記憶課題といわれる速さが求められる作業には効果的だが、精度を求められる作業には不向きなのだ。

計算問題や言語理解(国語の勉強のように文章を読んで理解する)は「早いことが良いこと」とは限らない。スピードが上がっても、エラーが増えるなどの「違う問題」が発生してしまうのだ。「言語理解力を上げるなら、逆にゆったりした曲がおすすめです」。

曲を聞いてから、その効果が持続する時間はさほど長くはない。「10分音楽を聞いて15分ぐらい持続するかな」程度なのだそう。

アップテンポの曲を聞くのは「あくまでも脳に準備をさせる」ため。始業前や勉強前に「気分を変える」ために聞く程度で十分なのだという。

高齢者がヒップホップ!?

宮﨑さんのもともとの研究テーマは「ドラムを用いた認知症予防・改善プログラムの開発」。認知症が進んでしまった高齢者向けの「認知機能改善プログラム」などを考案してきたが、現在は「認知症予防」に力を入れている。

中でも面白いのが、高齢者にダンスをしてもらうという実験。ダンス経験のない高齢者に、ヒップホップを練習してもらい、年に1回大会にも出場してもらうというもの。最初は「ダンス?無理無理!」と言っていた方も、今ではすっかりハマっているのだとか。

5年を目指して現在も実験を続けている。まだまだデータの取得段階のため分析はこれからになるそうだが、結果が楽しみだ。

研究成果をお届けしたい

宮崎さんはこれまでの「研究成果をみなさんにお届けしたい」という強い思いを持っている。今回の出版がそのひとつのきっかけになればいいという。今回はビジネスマン向けの書籍として出版したが、読んでみたら「あれ?両親のことも書いてあるぞ!と思ってもらえたらとても嬉しい」と語る。

泉大津市と認知症予防の取り組みを行うなど、研究成果を地方自治体や地域に還元する動きもしている。「お困りごとに私の研究成果が活用できるなら、ぜひ使ってください」。

今後はトイレ問題にも取り組んでいきたいという。おむつ生活にならないためには、かなり若いうちから対策をしておく必要がありそうだという。「筋力が落ちてからでは遅いんです」。

宮崎さんが作るプログラムのモットーは「ハードルを上げすぎない」こと。「みんなが日常生活でできること」をおすすめしていきたいという。これからの研究にも期待だ。

「すごい音楽脳」は電車の中などでもさらっと読める本になっている。ぜひご一読を!