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Interview

粋なまちの芸者

2022.2.28

芸者といえば京都のイメージが強いが、東京にも芸者がいるのをご存知だろうか。テレビドラマなどでしかお目にかかれない「芸者の世界」を少しだけご紹介。神楽坂の見番「東京神楽坂組合」の齋藤さんにお話を伺った。

芸者とは

芸者はお座敷で唄や踊りといった芸を披露するとともに、お座敷遊びなどでお客様を楽しませる。同時にお客様にも、料亭にも失礼がないよう心配りをする。華やかさだけでなく、細かい気配りが重要な仕事だ。

ご挨拶まわりに向かう芸者

神楽坂にはかつて700名ほどの芸者がいたという。昭和30年代でも料亭約80軒、芸者衆は200名ほどだったそうだ。
現在、神楽坂芸者は16名、芸者がお座敷を持つ「料亭」は3軒。
花街の継承、伝統芸能の伝承に向けて、芸者衆は日々稽古を続けている。

東京には六花街(ろっかがい)と言われる6ヶ所の花街がある。神楽坂、赤坂、芳町(日本橋人形町)、浅草、向島だ。どこも芸者、料亭ともに数が減っているという。企業の接待が減ったことに加え「コロナで料亭の営業自体、厳しい状況が続いてきた」と齋藤さん。

京都と神楽坂の違いを伺うと「基本的には同じ」とのこと。違いといえば呼称の一部で、京都では芸者の見習いを「舞妓」と呼ぶが、神楽坂では「半玉(はんぎょく)」と呼ぶ。また、お座敷で披露する芸もほぼ同じような構成だが「神楽坂さわぎ」などその土地ならではの余興がある。

花街用語の一部をご紹介

※見番(けんばん):芸者にお呼びがかかった際の取次やスケジュール調整、玉代の計算などを行う事務所(神楽坂の場合はスケジュール調整は料亭が行っている)。

※半玉(はんぎょく):芸者見習い。かつて「玉代(ぎょくだい)」が一人前の芸者の半分であったことに由来する。20歳頃までの呼称。

※玉代(ぎょくだい)または花代(はなだい):芸者を呼んだ際に支払う代金。料亭が席料、飲食代などと合わせて徴収し、芸者に支払われる。

※立方(たちかた):舞を舞う芸者のこと。

※地方(じがた):舞踊の伴奏をする演奏者のこと。

※引き着:芸姑の正装。お座敷に上がる際に着るもので、おはしょりをせずに長く裾を引いて着る。お正月には黒い引き着を着ることが通例。

「はじめましての会」やYou Tube配信も

芸者を呼んでの宴会は「敷居が高い」と思われるだろう。花柳界では「一見さんお断り」が一般的で、紹介がなければ芸者を呼ぶことができない。これは花街が昔からの「信用」で成り立っているからだ。

東京神楽坂組合ではそうした声に応えるための取り組みをおこなってきた。年に数回、大きな会場で唄や踊りを披露するイベントを開催するほか、「はじめまして」の方向けの体験イベントも行っている。コロナで中止になっていたこうしたイベントも、ようやく4月に再開されようとしている。「神楽坂芸者 かぐら坂への誘い(いざない)」だ。

また、芸者が経営するバーなどにも芸者を呼ぶことができる。様々な形でお客様をお迎えする体制が整っている。しかし、コロナで料亭やバーが休業、芸者にとっても辛い期間が長く続いたという。そんな中、イベントで踊りやお座敷遊びをYou Tubeで配信することにも参加した。日々の活動をFacebook、Instagramで告知することも欠かさないようにしている。伝統的な文化を守るため「新しいこと」にも積極的に取り組んでいる。

花柳界を後世に

かつて700名ほどいた神楽坂の芸者。バブル崩壊、リーマンショックを経て芸者も料亭も激減している。組合では後世に伝えるべく常に芸者の募集をしている。

とはいえ、芸者の世界は厳しい。唄や踊り、三味線などのお稽古ごとは多く、費用は自腹。芸者見習いになっても、しばらくは無収入。その間の生活費やお稽古代をまかなえるだけの資金がないと続かない。副業も禁止されているためアルバイトで凌ぐこともできないのだ。「覚悟と十分な準備が必要です」。

それでも「芸者になりたい」いう女性も多い。コロナ前までは週に1度程度の応募があったという。現在はFacebookやInstagramでも告知をしており、メッセージアプリなどを通じて問い合わせがあるという。

花柳界をサポートする信用組合もある。もともと花街での営業を強みにしてきた第一勧業信用組合が、東京神楽坂組合などとともに神楽坂の街全体の盛り上げに力を注いでいる。

「粋なまち」がこれからも続くことを祈りたい。

Info

東京神楽坂組合
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