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Interview

企業スポーツの今

2022.1.31

企業スポーツの是非はこれまで何度も議論されてきた。どれだけチームが強くても「本業の業績次第で休廃部」が行われてしまうことへの批判、「スポーツ界全体のレベルアップにつながらない」といった指摘がされてきた。
企業から見れば広告宣伝手段としての費用対効果が悪化しているという現状もある。昭和末期以降のプロスポーツ化に加え、海外のトップリーグスポーツが簡単に視聴できるようになったことから、企業スポーツへの注目度が相対的に薄れたからだ。
そんな中「全員アマチュア」で活動を続けているリコーテニス部。総監督の神出さんにお話を伺った。

プロとアマ

リコーテニス部は今年で創部62年、所属選手(強化チーム)は男子6名、女子6名とこじんまりしている。「テニス日本リーグに参戦するためには最低でも出場選手は4名いなければなりません。補欠選手もいれて選手は6名程度必要」と神出さん。

テニス日本リーグは実業団による日本最高峰のテニス団体戦。リコーテニス部はテニス日本リーグの第一回大会から参加しており老舗チームとも言える。リーグには男子18チーム、女子12チームが所属しておりブロック別の予選リーグ、決勝トーナメントを行っている。

時代の流れにあわせ、テニス日本リーグも徐々にプロ選手の参加が認められるようになっていった。現在は出場4選手全員がプロでも構わない。そのため日本リーグに参加するチームの中でも「選手全員がアマチュア」は珍しいという。テニスの団体戦はチーム内に1、2名のスター選手がいるだけでそれなりの成績が残せるため、プロ選手との契約をすすめる企業も多い。

リーグに所属しているチームもこの20年でかなり入れ替わった。プロのオープン化が認められたことで、昔からのチームが勝てなくなったり企業情勢により撤退。ただ「新たに参画したチームもあり、全体として所属チームは増えていますし、レベルも上がりました。観戦する側の楽しみは増えたのでは」と神出さん。「その中でアマチュアだけのチームが勝ち進むのはなかなか難しいのですが」と続けた。

とはいえ、リコーが力をつけていることは2019年まで5年連続、男女ともに「ベストアマチュア賞」を受賞したことからも伺える(2020年は新型コロナ蔓延のためリーグ自体が中止に。2021年のリーグは執筆時点では開催中で結果はまだ出ていない)。

フルタイムで働きながら

リコーテニス部の選手たちはみな、平日はフルタイムで会社員としての通常業務を行っている。所属先も仕事の内容もバラバラ。「選手たちは活動を通じて他の部署を知ることもでき、いい勉強にもなっているのでは」と神出さん。

練習は火・木の夜と土・日の昼間に行っている。「会社の勤怠ルールが柔軟にできているため、それぞれ自分の仕事をうまく調整して練習に参加しています。もちろん上長や同僚の理解があってこそのこと。感謝しています」。プロに比べると練習時間はかなり短いが、時間をやりくりして年に5~6回、試合にも出場しているという。

選手生活引退後は、他の社員と同様に働く。引退後にテニス部のコーチ、マネージャーといったスタッフとして活躍する人もいる。もちろん彼らもフルタイムで仕事をしている。

企業や社会に貢献していく

リコーテニスの基本方針は4つある。「リコーブランドのイメージアップ」「社会貢献」「従業員満足度の向上」「人格形成」だ。

「社会貢献」活動として宮城県や福島県の被災地復興イベントへの参加や、子供向けテニス教室の開催などを積極的に行っている。練習で使用した使用済みテニスボールを学校へ寄付する活動も行っている。「使用済みテニスボールは机や椅子の脚につけ、不快な音の発生を抑えるのに役立っている」という。

こうした活動は「従業員満足度の向上」「人格形成」にも一役買っている。「勝つことも重要な目標ですがそれだけではないと思っています。」と神出さん。「スポーツには地域を元気にする力があります。さまざまな活動を通じて地域や社会を元気にしたい。それがファンを増やすことにもつながり、試合での良い結果ももたらすと思います」。

昨年の日本リーグは新型コロナの蔓延で中止となった。選手たちにとって年に一度のチャンスを失ったことは「大きな衝撃」だったという。現役選手は会社員としてはまだまだ経験が少なく、仕事で活躍できる場はそれほど多くないからだ。

2022年のリーグは現在開催中。活躍を期待したい(執筆時点で女子は決勝トーナメント進出が決定した)。

INFO

リコーテニス部 Website
※女子がテニス日本リーグ決勝トーナメント進出!