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Interview

教育現場のICT㊦「知恵と工夫で」

2021.11.8

GIGAスクール構想のもと、学校のICTに取り組む教師の方々。某政令指定都市の公立中学校で社会科を教える先生のインタビュー、2話目です。

家庭学習への対応もまだまだ

―タブレットドリルは授業でしか使っていないのですか。

いいえ。宿題として自宅でやってもらうこともあります。
本校では休み時間のタブレット利用を禁止しているので、授業中もしくは帰宅後に使ってもらっています。休み時間の利用については学校によっては許可しているところもあるそうです。

―宿題でタブレットを使う際、Wi-Fi環境が必要ですよね。ない家庭の生徒さんへの対応は。

当初はPCやWi-Fi機器がない「全家庭に該当機器を配布」すると聞いていましたが、実現できていません。一斉休校の際は、機材の足りていない生徒にコンピュータ室の機材を教師が大慌てて配送したこともありました。
Wi-Fi機器も不足しており希望者全員には配布できません。そのため「タブレットドリルを学校であらかじめダウンロードする」「かわりのプリントを配布する」などの対策をとっています。ここでも意外と手がかかっています。

―タブレットは先生が定期的にチェックしているのですか。

いいえ。できていませんし、仕組み的にできない部分もあります。
例えば、生徒同士が勝手にTeamsでつながっても、それを教師が知ることはできません。いじめ防止のためにも教師がチェックするべきだと思いますが。
全員のタブレットを回収してチェックする時間もありません。

ただ、授業中にできるだけタブレットを見て回るようにはしています。生徒間のレベル差の大きさに驚くこともあります。自分で端末の背景色を変えるなど、使いこなしている子もいます。

教師間のコミュニケーションが増えた

―タブレット以外のICT機器は。

教室にはプロジェクターが設置されています。
ただ「黒板の1/3のサイズしか無く教室の後ろからは見えにくい」「音が割れてしまって聞き取りにくい」などの問題もあります。隣の教室の音声が漏れ聞こえることもあって、使い方が難しいなと感じています。

ルーターは普段使う教室には設置されました。体育館や廊下にはないため、場所によってはつながらないこともあります。

―GIGAスクールがはじまって変わったことは。

ハード的には、生徒の机が大きくなりました。タブレットを置くスペースを作るためです。
ただ1クラスの生徒数も教室のサイズも変わらないため、かなり窮屈になってしまいました。1クラスの生徒数を減らせるといいのですが。
また、これまでより先生方が仲良くなったなと感じています。ICTに長けている先生に教えてもらうこともあれば、わからないなりに工夫して成功したこと、失敗したことなどを共有しています。以前より会話が増えたと感じています。

―どんな工夫をされているのですか。

タブレットは在学中だけ生徒に「貸与」されるものです。
そのため子どもたちが一生懸命調べて作成したレポートが、卒業時には子どもたちの手元に残りません。タブレットからは印刷もできません。
考えた末に、レポートをTeamsで教師に送ってもらい印刷することにしました。こうした工夫は教師間で共有し活かしています。

生徒たちの成長のために

―月に2回のGIGA専門員の派遣以外に、市や教育委員会のサポートはないのですか。

市の専用サイトにFAQが掲載されていますし、Teamsにトラブル対応用の窓口があります。気になることがあるときには、その2つをチェックしています。

―今後はどのように。

学校にある機材でできることを少しずつでも増やしたい。必要な機材は提供してもらえるとありがたいのですが。

私たち教師の原動力は生徒たちの笑顔と成長です。3年間でできるだけ大きく成長してほしいし、成長した姿を見ることが喜びです。タブレットも他の機器も「生徒たちの成長」につながる使い方を模索していきます。

HIGHLIGHT

教師たちは自分たちの知識不足を痛感している。また、地域によってはタブレット端末以外のICT機器の不足もあるようだ。