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第8回 宮城県 ドラゴンレール大船渡線 角星
地図 宮城県 ドラゴンレール大船渡線 角星 東日本大震災の被災地、宮城県気仙沼で、復興のためのお酒「NAMIとUMI」を造っている酒蔵があると聞き、訪ねてみました。「金紋両国」醸造元の株式会社角星(かくぼし)さんです。

「NAMIとUMI」は、なんとコピーライターの糸井重里さんがプロデュースし、高崎卓馬さん、キギ、田中宏和さんという錚々たるメンバーがラベルやパッケージを作った日本酒。「低アルコール純米吟醸」という珍しいジャンルのお酒で、アルコール度数も9.5度と低く、飲みやすく仕込まれています。角星の社長さんは、「酵母は『みやぎ酵母・愛実(まなみ)』、お米は宮城県産の『蔵の華』を使っていますから、正真正銘、地元生まれ地元育ちのお酒ですよ」と言います。パッケージのかわいさは、「これが日本酒?」と思うほど。飲んだ後も大事にとっておきたい瓶です。
日本酒の概念を超えた「NAMIとUMI」 角星さんの本社は被災したため、現在は配送センターで営業中
社長さんが「NAMIとUMI」が誕生した経緯を説明してくださいました。東日本大震災のとき、気仙沼は津波に襲われ市街地は壊滅状態に。角星の本社建物も10m以上流されてしまいました。幸い酒を仕込んでいた酒蔵ではあと2mというところで津波が止まったのですが、打撃的だったのは、角星のお酒を扱って下さっていたお店が8割方被災されてしまったこと。「これからどうすればいいだろう」と途方に暮れたと言います。

「驚いたのは、すっかり流されてしまったと思っていた代々伝わる『両国』の看板が見つかったことです。看板は、商売をやっている者にとっての有形無形の『プライド』です。これが残ったことは心強かったですし、ご先祖様に『仕事を続けろ』と言われているような気がしました」と社長さん。すぐに復興への取り組みを開始しました。
津波に流される前の本社店舗 被災し10m以上も流されました
町が復興へと動き出した頃、コピーライターの糸井重里さんが「ほぼ日(ほぼ日刊イトイ新聞)」の出張事務所を気仙沼に置かれ、復興のための取り組みを始めました。それを耳にし、社長さんが「日本酒で何かできないだろうか」と訪ねたのが「NAMIとUMI」が誕生するきっかけに。このお酒には「ナミとウミは、仲のいい姉妹だった。ふたりはいつも同じものを好きになった。」という言葉から始まる物語があります。続き、気になりますよね?物語の続きやお酒が誕生した秘話は、下記のホームページからお確かめください。
NAMIとUMIの物語」(http://www.1101.com/nami_umi/2013-09-19.html
「NAMIとUMI」はこちらで購入いただけます。「47CLUB
がれきの中から見つかった看板 主要銘柄「金紋両国」と復興のお酒「船尾灯(ともしび)」
角星さんの主要銘柄は「金紋両国」。かつて陸中の国でお酒を造り、陸前の国で販売していたことから「両国」と名付けられたと言います。創業は明治41年。数年前に100周年を迎えました。「この間にも何回か地震にはあっています。その度に乗り越えて来たんですね」と社長さん。今回の地震では空調がダウンしたために、仕込み中のお酒がいつもよりも発酵したお酒になってしまいました。震災を生き延びたこのお酒に「船尾灯(ともしび)」と名付けたところ、全国から注文が来たそうです。社長さんは「皆さんが注文してくださって、ずい分助けられました。『船尾灯』という名前が素敵なので、今も引き続き、『船尾灯』という銘柄を造っています」と言います。

また、「船尾灯」と気仙沼大島で製造した無農薬で育てた純度100%の椿油、椿油を使ったカレーをセットにした「希望の光セット」も販売しています。(商品はオンラインショップ限定の発売)
角星オンラインショップhttp://kakuboshi.shop-pro.jp/

2011年7月、被災した気仙沼に初めて魚が水揚げされたとき、社長さんは「こんな状況の中、よくぞ水揚げをしてくれた」と感激し、お礼の気持ちで船の乗組員の方々にお酒をふるまったそうです。

角星のお酒の特長は「淡麗辛口」。「海辺の町ですから、魚料理がおいしく食べられるように仕込んでいます」と社長さんは言います。「さんずい」に「酉」を書いて「酒」という文字になることから生まれた「水鳥記(みずとりき)」は、第一章から第三章までのラインナップが揃う「うまし酒」。社長さんは「南部杜氏が仕込む、最初の一滴から最後の一滴まで飲み飽きしないお酒です」と、胸を張ります。「気仙沼にこの酒あり、と思っていただきたいですね」。

復興は思うようには進んでいませんが、鉄道は、ドラコンレール大船渡線が気仙沼駅まではつながりました。そこから先は、まだバスの運行です。気仙沼駅は高台にあるため津波による被災は免れましたが、港付近は津波に襲われ、今は更地に。ところどころ傷ついた建物が残っています。
JR気仙沼駅 市街地は更地に。復興も半ば
その中でもひときわ明るい一角がありました。「復興屋台村 気仙沼横丁」です。気仙沼で作られた商品を販売する店、気仙沼で穫れた魚介類のレストランなど、屋台がぎっしり並んでいます。「NAMIとUMI」も発見!「このお酒、人気ですよ〜」と店主さんがおっしゃっていました。
復興屋台村 気仙沼横丁 お昼に海鮮丼を堪能!
角星の社長さんは、「がれき撤去などは終わり、ボランティアの方も少なくなりました。これからは、全国で気仙沼のものを買っていただくのが一番ありがたい支援です」と言います。「何しろ、ものが売れて産業が活発になるのがうれしいですね」。

皆さんも、「NAMIとUMI」のお酒など気仙沼の名産品の購入で、復興支援しませんか?

株式会社角星(かくぼし)

創業明治41年。気仙沼で100年以上続く老舗。東日本大震災で本店が被災するも、酒蔵は健在だったためすぐに復興に取り組み、「NAMIとUMI」「船尾灯(ともしび)」などのお酒を生み出す。お酒はオンラインショップから購入可能。

株式会社角星
オンラインショップ

ドラゴンレール大船渡線

岩手県の一ノ関駅から宮城県気仙沼市を経由して岩手県大船渡市の盛駅までを結ぶ、JR東日本の鉄道。その線形を竜に見立てて「ドラゴンレール大船渡線」という愛称が付けられている。東日本大震災で被災したが、現在は気仙沼駅までが開通。


ドラゴンレール大船渡線

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